伝わる文章の書き方

思った通りに相手に伝わらない…
意図を確実に相手に伝える技術に苦手意識を持つ方がとても多くいらっしゃいます。
日々誰もが言葉に触れているのに、なぜこの技術が難しく思われているのでしょう。
理由には主に以下の3つが挙げられるようです。

・敬語が難しい
・話を短くまとめらない
・始め方と終わり方が分からない

この3つの特徴は、実は幼児性から来ています。
『あのね〜、今日ね〜、学校行ったらね〜、〇〇ちゃんがね〜、宿題忘れてね〜、あ!そのおやつ!新しいのだ。食べる食べる!』

敬語がなく、話にまとまりがなく、筋も通らず、最後は尻切れとんぼの状態。
多分、このときの子どもは身体をくねくねと動かしながら、手も足も動かしながら話していると思います。
そういう子どもの姿はかわいいし、まとまりがない話にも癒されます。
口から出る言葉の内容はどうでもよくて、魂でコミュニケーションを取っています。
大事な成長段階です。

しかし大人はそうはいきません。
大人の言葉へと切り替えていくには、敬語を習得するにはどうしたら良いのでしょうか?
あまりにも苦手意識が強い場合には子どもの成長段階に習って、少しずつ慣れていくことをお勧めします。

私のお勧めは絵本の音読です。
なかでも『科学絵本』が参考になります。
子どもが敬語を習得するのは家庭ではありません。学校です。
学校の国語の授業で少しずつ慣れていきます。
国語の授業では教科書の音読をして、身体に敬語を入れていきます。
口の筋肉を動かす練習をします。
まず自分の口から敬語が出ないことには、文章で記すこともできないのです。
学校の国語の教科書でよく取り上げられているのが、甲斐信枝さんの科学絵本です。

え?今さら絵本?
意外に思われるかも知れません。
しかし大人になってから改めて絵本に触れると、平易な言葉の背後にある情報の多さに気付かされます。
絵本の言葉遣いはとても美しく、文章の構成にも無駄がありません。
また、相手が子どもだからといって雑な扱いはしていません。
子どもの勘の鋭さは時に神がかっているほどで、警戒心がとても強いのです。
その警戒心を丹念に解きほぐす、精神的な練れも見て取れます。

甲斐さんはたくさんの絵本を出されています。
私が特に好きなのが
『ひがんばな』
『稲と日本人』
です。

絵からは植物に対する深い愛情と尊敬の念を感じます。
土や虫や植物を大事にして、先生と崇めて、すこしでもそこに近づきたいという謙虚な気持ちが絵からも文章からも伝わってきます。
だから同じ本でも、何回も何回も読みたくなります。

こういうものを教材として触れていると、敬語に温かみが生まれてきます。
敬語や丁寧な言葉は、相手との距離感を保つ緩衝材ですが、絵本を参考にすると冷たくなりません。
また嫌味にもなりません。

伝わる文章の目的は『自分との関わりを継続的に持ってもらうこと』にあります。
人間味はとても大切です。
ご自身がホッと心和む、美しい言葉で紡がれている絵本の音読を、ぜひ続けてみてください。
習得に時間は掛かりますが、借り物ではない本当の力がつき、ご自身の支えとなることでしょう。

2024年06月05日